自殺 (文春文庫)

自殺 (文春文庫)

自殺を肯定しているのか、それとも否定しているのか?書き続けることで生きている彼女のように、私を「こちら側」につなぎとめられる何かが欲しい、と思う。いつでも死ねると思ったら意外と楽になれたりする。(2000.5.15)

女学生の友 (文春文庫)

女学生の友 (文春文庫)

暇と不満を持て余す退職老人と、家庭崩壊のため援助交際へと向かう女子高生。二人が出会い、共謀して巻き起こした恐喝事件の顛末は―。根拠のない生、無意味な現実を漂う、現代の孤高な魂はどこへ辿り着くのか。
「女学生の友」:村上龍ラブ&ポップ」を思い出す。援助交際がいけないと言われる
  理由の一端が、なんとなくわかった気がする。お説教臭くなくていい。
少年倶楽部」:「これから何も考えないこと」の台詞が刺さる。(2002.11.10)

水辺のゆりかご (角川文庫)

水辺のゆりかご (角川文庫)

昭和43年、夏至の早朝、在日韓国人夫婦のあいだに一人の女の子が生まれた――。家族のルーツ、両親の不仲、家庭内暴力、苛烈をきわめた学校でのいじめ、そして自殺未遂…。
過酷な幼少時代を、痛々しく切り抜いて見せられる。”自意識過剰”を演劇に、小説に昇華させるその才能に感嘆。生まれながらの作家なのだ、と思わされる。過激なほどにまわりと闘い、自分は誰なのか探し続けるその生き方に、共感と涙をおぼえる。私はここまで闘えない、あるところでそれなりに妥協して生きてきた。その痛みは、彼女の痛みとは比べものにならないほどちっぽけなものだ。私は生きなくてはならない、なんとなくそう思った。(2001.11.4)


タイル (文春文庫)

タイル (文春文庫)

主人公は「男」。他の登場人物には名前がついているのに、彼は最後まで「男」。部屋中にタイルを敷き詰める「男」の狂気がじわじわと怖くなってくる。なんだか少し痛みを伴う恐怖。(2000.10.27)

魚の祭 (角川文庫)

魚の祭 (角川文庫)

19歳の柳美里による、戯曲集。
わたしも芝居をやっていたことがあるので、1回は「役者」としての目で、もう1回は「読者」としての目で、そしてさらに「観客」の目で、読み返した。
役者としては難しいけれど、一度はやってみたい役がいくつか。読者としては、もしかしたら、戯曲として美しいものは舞台に乗せるとあまりそうでもないかもしれない、とのかすかな予感。観客としては、小さく息を呑むような拍手で幕を下ろして。