【明け方にピアノを叩く】
眠れなくて、明け方、ふらりと大学へ。
もちろんこんな時間には誰もいない医局。わたしのデスクは書類の山と化していた。少し片付けをしてから、ピアノのある部活動棟に向かった。
冷たい空気にピアノの音はよく冴えた。
たまにはこういうのもいいな、と思った。
誰のためにでもない、自分のために弾くピアノ。
わたしを審査する人なんてもういないのだ。
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食欲はだいぶ出てきた。それでもやっぱり、機会摂食とでもいうべきか、自分から積極的に食べる気にはならない。
しばらく会わないうちにすっかりやつれた(らしい)わたしを見て親も少し心配したようだった。親に仕事を休んでいることは言えなかった。なんとなく。
昔のようにはならない。絶対に。
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いろいろ考えた結果。大学院に行くことにした。
いや、実はあまりいろいろは考えていなかった。オファーに対して、それが明らかに自分に不利でない限り、出来るだけ肯っていくというのもわたしのひとつの生き方だと最近は思っているから。
不安はある。でも、それはきっと何をしていても同じなのだと思う。わたしにとって、きっと安住の地はないような気がするから。そして逆に、どこでも安住の地にしてしまえる自信も、なくはない。だからこその選択。
どのみち根無し草。4年間の身分が保証されただけでもありがたいと思うべきなのだろう。
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究極の愛と憎しみ。このひとは本当にそのあたりの論理が上手い。(2002.12.14)
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タイトル作「いちばん初めにあった海」と、その姉妹作といえる「化石の樹」からなる1冊。
幼いが故に負った傷は一生癒えることがないのだろうか。こわれもののような千波の心は、けれど謎の手紙の差出人によって再生することが出来た、と思う。