【白い天井、孤独】

2人部屋にひとりで入院している老婦人がいる。隣のベッドは綺麗なまま、白いシーツが目にまぶしい。
点滴当番に回ったら、口は悪くて語気が強い、けれど本当は寂しがりやのそんなおばあちゃんがいた。主治医の悪口を聞きながら針を刺し、「点滴、終わったらナースコール押してくださいね」と笑顔で去ろうとしたら、半分閉じられたカーテンの向こうから、さっきまで主治医の悪口をさんざん言っていた口調とはまったく違う声で、「な、先生…隣のベッドに今夜泊まっていかんですか」と。思わず引き返して、30分くらい話をした。とりとめもない話。彼女のこと、病気のこと、そしてわたしのこと。寂しい、としきりに訴える彼女に、でもわたしは何もしてあげることが出来ない。それがくやしい。でも、これはきっと、主治医ではないから出来ること、なのかもしれない。ただ、話を聞くこと。わたしが主治医になって、苦渋の選択をしないといけない立場なら、きっと心を鬼にしないといけない局面も多くあるのだろうから。
いろんな立場の人間がいる、ということは、ある意味救いでもあるのかもしれない。

それにしても、3月もあっというまに終わってしまった。
ちなみに、わたしの勤務先は、昨日付けで研修医はいったん解雇されているので、今日1日は無職だったわけだ。明日から再度採用される、とのこと。わたしは向こう4年間以上は職員として採用されることはまずないのだけれども。
明日から4月。とりあえず4月1日につく嘘でも考えておきますか。