【はじめて】

君は淡々と、悲しい過去を話してくれた。
電話の向こうで、いつもと同じ口調なのに、
気がついたら、
わたしはその言葉たちに、身を切られるように泣いていた。

ちょっとした揺らぎの連続が、わたしたちをここまで導いた。
もしあの日、雨が降っていなかったら、
もしあの時、どこかで地震が起きていなかったら、
もしあの瞬間、どこかで蝶が1羽死んでいかなかったなら、
わたしたちはずっと、出会うことのない平行線の上にいた。

わたしに出会えてよかったね、という言葉を、
飲み込もうとして、飲み込めなくて、わたしはただ、泣いていた。