【終わらない夜】

久しぶりにゆっくり休もう、と思って、時間外の仕事をキャンセルして帰ってきたものの、なんだか何もやる気にならない。
そろそろ限界が近いくらいに散らかった部屋も片付けたいし、山積みになっている情報ソースも整理したいし、美味しいお菓子を食べながらコーヒーを飲んだりもしたいし、これでもかというくらい眠りたいし、あたたかいお風呂につかってぼーっとしたりもしたいし、さぼりがちなお肌のお手入れもじっくりしたいし、剥げかけたペディキュアを綺麗に塗りなおしたいし、ストレッチもいつもより念入りにやりたいし、お買い物にも行きたい。
でも、せっかく時間が出来たのに、結局何ひとつ達成されなかった。
まぁいいか、こんな日もあるし、ゆるりと時間が過ぎていくだけというのもなかなか悪くはない、と思うのだけれど、それでもやっぱりどこかで「もったいない」という意識が働いてしまうのか、どうも焦ってしまう。
そして結局、何も出来ないのに眠れもしない、という夜。こんな夜はなかなか終わらないのだ。

ロールケーキを食べ続けていることになんとなく罪悪感を持っていたが(ここ2、3日は食べていないけれど)、いつも買っているあのロールケーキはやはりかなり美味しいと思うし、ちょっと体重は増える傾向にはあるけれども、「ダイエット中なのにロールケーキがやめられないんだ、えへ」なんて、外国の漫画に出てきそうな女の子のかわいらしいわがまま、に取れなくもない。そんなふうに考えついて、ちょっとだけ笑った。

渡辺美里ニューシングル「トマト/No Side」が先日発売になった。歌手生活21年目、そして今年は西武スタジアムでのコンサートを卒業した彼女。21年!わたしはデビュー3年目くらいから追いかけているから、わたしの人生の3分の2は彼女の歌を聴きながら過ごしてきたことになる。それって、うまくいえないけれど、なんだかすごい。それより、彼女自身は自分の人生の半分以上を歌手として過ごしてきたのだ。それも、なんか、すごい。
ああ、そういえばあの子も渡辺美里のファンだったなあ、とふと思い出す。ここのところ毎年、西武スタジアムでのライブが近づくと、「湖都ちゃんも行くよね?」と電話をくれていたっけ。結局、彼女と一緒にスタジアムに行くことはなかったのだけれど。そして、それはこれから先、もう、ない。
あの子がこの世界からふっと消えてしまったことを、あの子の妹さんはメールで、あの子の旦那様は電話で(でも、この着信は気づかれないまま、コールバックのタイミングをずるずると延ばしてしまっている。彼とはまだ話をしていない。)知らせてくれた。あれから3ヶ月くらいになるだろうか。いまだに信じられないでいる。タイミングを逸してしまったために、あの子の死因は何だったのか、すら聞いていない。落ち着いたら、ご挨拶に行こう、とは思っているのだけれど。
DVD、万単位になるからちょっときついけど、絶対買う!なんて、その数日前には笑って話してくれていたのに。予約したって言ってたのに。
彼女の歌を聴くたびに、わたしはあの子のことを思い出すのだろう。
今更だけれど、ご冥福をお祈りしています。