【当直室より愛を込めて】

朝から夜までの当直中。
相変わらず、長期療養病棟は平和だ。何もないまま、あともう少しで拘束時間が終了。

明日までに学会発表の抄録を書かなくてはならないのだけれど、とてもそんな気力もなく。しかも、使いたいカルテが他科の先生に貸し出し中となっていた。かなりショックが大きい。というのを言い訳にするつもりはないが、どうしてここ数日こんなにやる気がないのだろう、と自分が情けなくなってくる。

あと1週間で、他科にローテーションに行く、ということで、少しナーバスになっているのかなぁ、とも思う。過度の緊張、というか。
あ、なるほど。そうかもしれない。それで先週と今週の不調の説明がなんとなくつきそうだ。
寂しい気持ちになりがちなのも、きっとそれが原因に違いない。いや、絶対、とはいえないが、そういうことにしておこう。それで少し自分が納得するのなら。

冬の旅人 (角川文庫)

冬の旅人 (角川文庫)

「冬の旅人」:シューベルトの歌曲「冬の旅」をモチーフにした短編。著者の音楽への造詣の深さがうかがわれる。彼の描く若い女性はみんな無鉄砲でそこが魅力なのだけれど、これは彼の好みなのだろうか。博子もかなりいいキャラ。
「巨人の家」:なんでも大きく作ってある「倍々屋敷」。そんな奇妙な場所で起こる殺人。意外な幕切れ、意外な人が犯人で驚く。
「本末転倒殺人事件」:保身のために何かをしでかしてしまう人間、というのがいちばん恐ろしい、と思う。
三毛猫ホームズの水泳教室」:人気シリーズの三毛猫ホームズ登場。片山と夕子に恋が芽生えるとかいう展開はありえるのか?(2003.10.4)

主婦ならではの発想、会話がよく書けていると思う。ちょっとステレオタイプかな、といった感はあるけれど。(2002.6.17)

もう何度も読み返したので、だいたい先はわかっているのだけれど、なんとなくスリリングに読める。自分の年齢のせいか、主婦的発想がなんとなく理解出来てきたような気がする。受け手の環境によっても、感じ方は変わってくるのだということを実感。(2003.12.31)

湖畔のテラス (集英社文庫)

湖畔のテラス (集英社文庫)

大どんでん返し、とまではいかないけれど、思いがけない結末に息を呑むことの連続。それに、「このあといったいどうなるんだろう」と思わせる終わり方も、なんだかいい。やはり想像力ははたらかせてみたいもの。(2002.5.3)

もうひと昔以上前の作品なのに、それほど古さを感じない。あまり流行を追わない作風のためだろう。刑事より、三毛猫のホームズのほうが活躍するなんて、痛快。(2002.5.17)

三毛猫ホームズ」シリーズの短編集。謎かけ、謎解きというよりは、軽妙なコメディーといった感じ。でも、なんとなくどちらにも行ききらず、ちょっと中途半端な感じを残す。それにしても、彼の相変わらずの多作ぶりには驚かされる。少なくとも私が読んだ中では、つまらないものはあまりなかったような気がする。それだけで、もう凄い人。(2002.1.31)

こんなに近くにいるのに、あなたの手に触れることが出来ないことが、とても切ないのです。

ふたりで夜の街を歩きながら、寒いね、と口に出すことで、実はわたしはあなたに媚を売っているのではないかと、とても不安になりました。そう言えば、あなたはわたしの手に触れてくれるのではないかと思ったから。
そして確かめてみたかったのです。わたしが密かに抱いている、涙が出そうででもあたたかい感情が、本当は何なのか、を。

肩と肩の間は15cm。
あともう少し、あなたに近づいてもいいですか。

甘い手錠に検閲されたその言葉は、きっと、ずっとあなたに届くことはないでしょう。