【つながらない、わたし】

「ちょっと休んだほうがいいよ」とあちこちからの声。
泣きながら答えるわたし。でも、その記憶も、ほんの数時間前のことのはずなのに、どこかおぼろげで、つかみどころがない。
きっと休んだほうがいいのだろう。何もしないでぼーっとして、ごろごろして。あるいは遮断された環境がいいのかもしれない。入院するとか、実家に帰るとか、あるいは別の誰かのところに行くとか、ね。少なくとも、ちょっとばかり限界が近づいてきている感は、わたしにもわかる。
なんて考えていられる間は、まだ打算的でいられる、ということかもしれない。まだ大丈夫、かな。
うっすらと眠りながら、明日、目が醒めなければいいのに、なんて久しぶりに思ってみる。

外勤。先週土曜日からろくに働いていないので、実質は4連休明け、といった雰囲気のわたし。それなのに珍しく、いつも平和なはずのこの病院も今日は何故か波乱含み。
いや、それってもしかしたら、わたしが波乱を起こしているのかも。気づかなければ済んだことだったのかもしれない。みんな気づかないふりをしているだけなのかもしれない。もしかしたら。

危ない、危ない。こんなに懐疑的になってどうする。しっかり、わたし。

でも、土曜日に診て心配だった人はかなり良くなっていて。原因はまだわからずじまいだけれど、とりあえず症状がおさまったところで良し、と。時間とお金をかけて細かな原因検索をすることだけが、いいことではない、と、市中の病院に来てみるとわかる気がする。もちろん、大学病院や高次機能の病院があってこそ、の話ではあるのだけれど。

とりあえず、明日から(いや、実際は今週あたまからだったけれど。)お休みをいただくことに。脆弱で甘えていて他人に迷惑ばかりかけるわたし。
でも、罪悪感すらいまは、ない。それすら面倒だ。
実際、死にたい、と思うのすら面倒。
まだ取り返しのつくうちに手を打てただけ、ましだと思うことにしよう。

夢の中で見たあの青空は眩しくてきれいで、
わたしはそれこそ夢中でシャッターを切った。
けれど、フィルムには何も焼きついてはいなくて、
結局、眩しさにくらんだ不安定さだけが残った。

残虐記

残虐記

人気作家・小海鳴海の夫から、編集者宛てに届いた一通の手紙。そこに添えられていた原稿は、幼い頃の彼女が経験した誘拐拉致事件の真実だった。
他人の勝手な想像・妄想により深く傷つけられる彼女。その過程はうっすらとわかる気がする。実際に何かをされることよりも、それ以上に品のない妄想や視線のほうが、ずっとずっとひとを傷つけることが出来るのだ、と。(2004.12.15)