【朝焼けがあなたを連れ去るなら 太陽に向かい矢を放つでしょう】

朝。仕事は休むはずなのに、いつもよりずっと早く目が醒めてしまった。睡眠薬はいつもより増量しているはずなのに、な。
布団のまわりにコアラのマーチが食い散らかされていた。睡眠薬を飲んでからの記憶がない。読みかけの本も、全部読んだような跡がある。ぱらぱらめくっていたら、なんとなく内容は思い出すが、読み終えたことを咄嗟に思い出せなかったのが少々ショックだ。

睡眠薬抗不安剤、あるいは抗鬱剤を飲みながら仕事をしている医者、というのは、周囲に不安を与えるものだろうか、とふと考えた。別に、実際に患者さんに言うわけではないのだけれど、こういうところで、匿名ではあるけれど、「睡眠薬を飲んでいます」と公言するのは、どうなのかなぁとか。
睡眠不足や妙な焦燥感で、医療ミスをおこされるよりはいいのではないかと思うのだけれど。実際のところはどうなのかな、と。

手の届くところにあるものを手に入れようとすることが、却って怖く感じるのは何故だろう。
手の届かないものを追いかけているほうが、もしかしたらずっと楽なのかもしれない。

少年被疑者 (角川文庫)

少年被疑者 (角川文庫)

満月の夜は死人が出る。だから、怖くて外を歩けない。―中学生が書いた詩の一説には、事件の核心に触れる重要な意味が秘められていた!北陸の一都市を震撼させた幼女殺害事件。一人の中学生の逮捕によって、事件は一気に解決したかにみえた。しかし、金澤地検に赴任したばかりの検事・有本祥子は、その被疑少年を取り調べていくうちに、ふとした疑問にぶつかり、再び事件を洗い直し始める…。検察庁の機構や制度、少年刑事事件の手続きなど、読み応えある情報量と臨場感溢れる筆致で綴った、リーガルサスペンス。

近頃急増しているらしい少年犯罪。いくら少年だからとはいえ、刑があまりにも軽すぎることに戦慄が走った。重い罪を科したからといって、被害者が戻ってくるわけではないけれど、それで遺族は納得するだろうか。やりきれない思いを抱えるしかないのだろうか。そういった問題も孕みつつ、読みやすくて勉強になった。(2001.4.21)

ヒロイン・祥子のプロとしての意識と、個人的な感情の交錯が面白かった。そういうことは仕事をしていく(特に人と接する)うちに必ずといっていいほど当たる壁だと思うから。現職検事(当時)だったから書けた作品、なのだろうか。

三人の女子高生は狂喜した。好奇心と冒険心の強い年頃の彼女たちにとって、立入禁止の教室を黙って探検するのはたとえようもないスリルなのだ。だが、彼女達は気づかなかった。彼女達の背後の冷酷な視線に…。そして、一人一人彼女達はこの世から姿を消した―。学園に忍びよる恐怖の影!「絵と宝石」に隠された謎とは?可愛らしく好奇心の旺盛な17歳の名探偵真知子を主人公に、学園の友情、愛、青春を描くサスペンスミステリー。赤川次郎の初期の名作、だと思う。

次々と殺される少女たち。その謎が明かされるのが学園祭の演劇、というのも新鮮。ちょっと暗いムードの長編だけれど、真知子の最後の台詞が軽妙で、清々しさを残す。(2002.5.17)

息をつかせぬ展開。あっというまに読ませた。恋愛小説としても読めるな、というのが新たな感想。(2003.9.30)

骨音―池袋ウエストゲートパーク3 (文春文庫)

骨音―池袋ウエストゲートパーク3 (文春文庫)

世界で一番速い音、それは骨の音だ、と語るミュージシャン。続発するホームレス襲撃事件。池袋ゲリラレイブで大放出されたドラッグ「スネークバイト」。義足のカリスマモデル。そしてマコトは恋をする。
現代のストリートの青春を生き生きと描いた、池袋ウエストゲートパーク第3弾。

マコトのキャラクターが好きで、ついつい出るたびに読んでしまうシリーズ。
このお話のなかでは、トワコのキャラクターも好きだ。どことなく達観しているようで、でもまだ少女らしい幼さを残していて、しかも美少女ときたら!
1、2と同じく、息をもつかせぬストーリー展開。スピード感で言ったら、最近の小説の中ではかなり(わたしが読んだ中では、という意味で。)上位を行くと思う。それでいてきちんと内容が頭に残るのは、それなりの書き込み方をしているからだろう、と感心。