【つらつら】

ヴァイブレータ (講談社文庫)

ヴァイブレータ (講談社文庫)

ヴァイブレータ―振動するもの。あたしの中身は震えつづけている。アルコールと食べ吐きで辛うじて自分を支えているライターのあたしは、コンビニで知り合った男のトラックに乗りこみ、航路の道連れとなる。肌の温もりとセックス、重ね合う言葉。四日間の「旅」を描く、痛いほどに切実な、再生の物語。

この手の「私小説的」小説は実はちょっと食傷気味、というのが正直な感想。セックス、暴力、依存、アルコール、過食に嘔吐、もうたくさんだ。
ただ、「ヴァイブレータ」はきちんと表現している。書き表すことの出来ない何かを表現しようとして懸命になっているのが伝わってくる。

着信アリ (角川ホラー文庫)

着信アリ (角川ホラー文庫)

由美が気乗りしないまま参加した合コンの席で、陽子の携帯電話が聞き覚えのない着信音で鳴った。液晶には「着信アリ」の文字。メッセージを確認すると、陽子の悲鳴のような叫び声が録音されていて、着信履歴には2日後の時刻と、発信元として陽子自身の携帯の番号が残されていた。そして、その2日後のその時刻。陽子はメッセージに残されたとおりの悲鳴をあげて不可解な死を遂げてしまう…。終わりのないチェーンホラー。

怖い、怖いと思いつつページをめくる手を止められず、読み終わったあとに鏡を見るのが怖くなったり、小さな物音にびくっとしたりする。そんなホラーを久しぶりに読んだ。個人的に、病院ネタで身近な気がしたのも原因ではあるのだろうけれど。ハッピーエンディングで終わらない(いや、これはこれでハッピーエンドか?)ところも、恐怖を後に引く要素。

夢を見た。

 部屋のたくさんある家に住んでいる。
 父と父方の祖母、Cちゃんと、何故か会ったこともないAさんとそのお友達がいる。
 パソコンもたくさんあり、私の使っていたものが不調になったらしく、私の知らない間に、取り換えられていた。
ポスペットのおやつとか、来ていたメールとか、移さなきゃいけないデータもたくさんあったのに、どうして勝手に換えちゃうの」
と父に文句を言う。けれど、データはパソコン屋さんが移しかえてくれていた。
 新しいパソコンは、画面も、キーボードも、本体も小さく、ピンク色の可愛らしいデザインだった。キーボードはあまりにも小さく、指で本当に押せるのか不安なほど。でも、早速それで、「夢」を打った。

 また何かが不調になり、外国人の”マイケル”(勝手に名付けていた)がやってくる。アップライトピアノの上に上がって、何かを直そうとしたが、いきなり落ちる。
「are you OK?」
と尋ねる私に、
「ダイジョウブ」
と答える。私が英語で尋ね、彼が片言の日本語で答える会話。
 何かは無事直り、彼は帰っていく。

 またその何かが不調になり、今度は客人として来ていた千穂ちゃんが、「ちょっといたずらしようよ」
と言い出し、アップライトピアノに少し細工をする。その鍵盤の上に座って、千穂ちゃんは待っている。すると、鍵盤が不規則に波打ち出し、千穂ちゃんは押し出されて鍵盤から落ちてしまう。

 とにかく部屋とパソコンがたくさんあり、それでかたかたと文書を作っていた記憶がある。

 目が覚めた。 

(鍵盤)

天使の梯子 Angel's Ladder

天使の梯子 Angel's Ladder

天使の卵」の続編、というべきか。大学生だった夏姫と歩太も29歳。夏姫はかつての教え子だった8歳年下の慎一に熱愛される。まるで10年前の春妃と歩太のように。
歩太との関係に嫉妬を燃やす慎一。死者への悔い、そして癒し。

続編ではあるけれど、より成熟した「女」としてのヒロイン。春妃よりずっと、夏姫は「女」として描かれているのを感じた。そして夏姫は最後まで生きた。慎一との恋が成就するかどうかはともかく(何をもって成就、とするかも問題だ。)ふたりはきっと幸せな恋をしていくだろう、というのが希望的な感想。(2004.12.16)