【風邪】

今夜はやけに救急車がたくさん通る。いまのわたしには公私ともにあまり縁がないけれど、それほど気分のいいものではない。

吐き気がする、胃になにかが詰まっているように感じ、食欲もない。横になると胃酸が逆流してくる。窓を開けた部屋にいるのに暑くてたまらない。もしかしたら風邪をひいたのかしら。

あの子のご主人に電話をかけた夢を見た。ごめんなさい、わたしはまだあの子に会いに行くことが出来ないでいる。

四十回のまばたき (幻冬舎文庫)

四十回のまばたき (幻冬舎文庫)

結婚七年目の売れない翻訳家圭司は、事故で妻をなくし、寒くなると「冬眠」する奇病を持つ義妹耀子と冬を越すことになる。多数の男と関係してきた彼女は妊娠していて、圭司を父親に指名する。妻の不貞も知り彼は混乱するが粗野なアメリカ人作家と出会い、その乱暴だが温かい言動に解き放たれてゆく。欠落感を抱えて生きる全ての人へ贈る感動長編。
落ちはねたばれになるので触れない。なんでも受け入れられそうな主人公と、その義理の妹との暮らしは、なんだか静かで、でも少し哀しい。なんだか村上春樹と重なった。主人公も、語り口も、よく似ている。でも、この人はきちんと最後にテーマへの答えを用意している。わかりやすい物語だった。<何かが欠けている人間は、哀しくて、美しい>という帯の言葉がそのまま答え。(2001.6.30)
答えは明確なのに、どこか置き去りにされたような読後感。「結婚」の文字は出来れば出さないで欲しかったと思う。「何かが欠けている人間」、人間はみんなどこかが欠けている。人間とは皆哀しくて、美しいものなのかもしれない。私も?(2002.6.23)
きれいごとなのかもしれないけれど、近頃、誰かが死ぬ話よりも、誰かが生まれてくる話に弱くなった。そして、「代弁者」という存在にも、こだわりがなくなってきた。年を重ねた証拠、というのはこういうところにあらわれるのかもしれない。(2005.11.6)

イノセントワールド (幻冬舎文庫)

イノセントワールド (幻冬舎文庫)

支え合うように快楽でむすぶ、知的障害の兄との関係。「テレファックス」と呼び合う売春。精子ドナーによる自己の出生の秘密。やがて、兄の子を身ごもってしまう―。さまよい、新しい現実感で生き抜く十七歳の女子高生<アミ>。
売春。それは忌み嫌うべきことなのかもしれない。けれど、ときおり憧れに似た感情を持ってしまうことがある。この本を読みながら、何故かそんな気分を思い出したのだった。こころは誰にも渡さない。(2003.3.1)
アミが守ろうとしているのは何なのだろう。家族?愛?友達?(2005.11.6)