【明日、早起きしなくちゃいけない日に限って眠れない】

久しぶりにアルバイトのない週末。だらりと眠って、もうクリスマスの雰囲気が色濃い街をふらりと歩く。人がたくさんいるところはやっぱり苦手で、土日の街はかなり疲れたけれど、お店のお姉さんなんかと与太話をしてみるのも少し楽しい。
そういえば気になっていることがあって、先月から今月にかけて、いままでの自分にはあり得ないくらいの大量の買い物をした。世間一般からみたらそう大したものではないのだろうけれど、でも、それほど「安物」というわけでもなく、それなりにしっかりした、使えるものがほとんどだ。コート、ジャケット、スカート、ワンピース、キャミソール、カットソー、靴下、靴、帽子、ネックレス、ブレスレット、下着、ワイン、髪飾り、本、CD、化粧品…数え上げたらきりがない。いわゆる「ブランド品」に興味がないのでそれが経済的には救いになっているけれど。我慢が出来ない、というわけでもなく、買い物をしたらすっきりする、というわけでもなく、妙に「普通に」買い物をしてしまっている。買って後悔しているものもないし、借金地獄に突入するわけでもなし、だから、別にいいんだ、と思えればいいのだけれど、なんかちょっとおかしいな、この感じ、というのはぬぐえない。
1日の買い物で何万円も使って、持ちきれないほどの荷物を持って帰る、なんていうのは、自分とはまったく関係のない他人事だと思っていたけれど、いまの状態を考えると、あながち想像出来なくもないなぁ、と思いはじめた。

ホテル・アイリス (幻冬舎文庫)

ホテル・アイリス (幻冬舎文庫)

染みだらけの彼の背中を、私はなめる。腹の皺の間に、汗で湿った脇に、足の裏に、舌を這わせる。私の仕える肉体は醜ければ醜いほどいい。乱暴に操られるただの肉の塊となったとき、ようやくその奥から純粋な快感がしみ出してくる…。少女と老人が共有したのは滑稽で淫靡な暗闇の密室そのものだった。
淫らなのに、何故かいやらしくない。嫌悪感はなく、清々しささえ感じるほど。醜いはずの老人の姿さえ、神々しいものに思えてきたりもする。筆力の妙。(2002.5.19)
このホテル・アイリスのある街はどんなところなんだろう?地図のどこにある街なのだろう?マリの髪はどんなにつややかで長く美しいのだろう?この海は、この船は、この家は、この翻訳家は…疑問ばかりが浮かんでは消え、そしてやっぱり、静かに収束していく。
それにしても、こういうのってストックホルム症候群みたいなものなのだろうか。それとも快楽に溺れているだけなのだろうか。逃げたくても逃げられないのか、それとも逃げたくないのか。(2005.11.14)