【綻び】

わたしのまわりの、そのまわり、くらいのところが、少しだけ綻びはじめているのを見つけた。わたし自身にはほとんど影響もなく、わたしの生活環境にもまったく影響はないのだけれど、そういった小さな小さな綻びは、ちょっとずつ外壁から感染してきそうで、怖い。

疾走 上 (角川文庫)

疾走 上 (角川文庫)

疾走 下 (角川文庫)

疾走 下 (角川文庫)

15歳の少年が背負った苛酷な運命。犯罪者の弟となり、父も母もどこかに逃げてしまった。残されたシュウジの走りつく先はどこだろう、とはらはらしながら、でもどこか醒めた気持ちで読み進んだ。特徴的な二人称で語られているのが、なんとなしに不安を煽る。こんなに冷静にシュウジを見つめる目に少しだけ恐怖も感じて。最後には、その視線にはあたたかさもかなりの割合で含まれていたことがわかったのだけれど。(2005.11.26)